2次元電子系を積層させて得られる擬2次元電子系では、 磁場の大きさを一定に保ったまま磁場の角度を変化させていったときに、 2次元面に垂直な方向の磁気抵抗が、 フェルミ面の形状を反映して、振動的に変化することが知られています。 磁気抵抗はakF tanq n= p (n-1/4).....(1)で表される角度 qn において、極大値をとります。ここで、 a は2次元電子面間の距離、 kFはフェルミ波数です。 この角度依存磁気抵抗振動は (BEDT-TTF)2I3などの有機導体で 最初に測定された現象だですが、フェルミ面の形状だけに由来する現象なので、 擬2次元的フェルミ面を持つ一般の系に共通に見られるはずです。 我々は、半導体超格子を用いて擬2次元的フェルミ面を作成し、 角度依存磁気抵抗振動の実験をおこなっています。
GaAs/AlGaAs半導体 超格子は分子線エピタキシー法を用いて作成します。 基板に垂直方向の電気抵抗を測定するために、 基板の表側と裏側から電極をとります。 図にいくつかの磁場で測定した磁気抵抗の角度依存性を示します。 測定はShoubnikov-de Hass 振動を抑えるために 24.7Kという比較的高温で行っています。 磁気抵抗が極大を示す角度は式(1)に従っており、 n=4に対応するピークまで見ることができます。
半導体超格子を用いた従来の試料では[1]、 磁気抵抗のピークは2つしか観測されていませんでしたが、 フェルミ面の形状を工夫することにより、最近の試料では、 高次のピークが観測されるようになっています。
参考文献
[1] R.Yagi, Y.Iye, Y.Hashimoto, T.Odagiri, H.Noguchi, H.Sakaki: J.Phys.Soc.Jpn.60 (1991) 3784.
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